創業・起業・独立後に必須!青色申告にもマストな「帳簿記帳」の記帳方法
はじめに
会社を設立したり個人事業主として事業を運営したりする上で必須になるのが「帳簿記帳」。会社員時代に経理を経験したことがある方ならともかく、多くの人が不安に思う部分もあるかと思います。ただ、節税のメリットが大きい青色申告には帳簿記載が必須となりますのでルールや書き方を正しく理解しておくべきであるといえるでしょう。
▼目次
創業・起業・独立後になぜ帳簿記帳が必要なのか
帳簿記帳とは「会社におけるお金の流れを記録し、管理すること」です。会社の財政状況や経営状況を正しく把握しチェックするために非常に重要であることはもちろん、税務申告のためにも必要となります。
会社員のように給与所得者に当てはまらない経営者や個人事業主の方は、申告納税制度に基づいて所得税を納税する必要があります。申告納税制度とは、納税者自身が自分自身の所得を正確に計算して申告(確定申告)し、その所得に対する税金を払う制度のことを指します。この確定申告には「白色申告」、「青色申告」の2種類があります。
特に所定の申請をしない場合は白色申告となり、別途事前に税務署へ申請を出すと青色申告を行うことができます。青色申告を行うと白色申告に比べ控除額が多くなるメリットがあります。
そのほか、赤字が出た場合に翌年度以降に繰り越すことができたり、親族への給与が経費にできたりするなどのメリットもあるのですが、この青色申告にあたって必須となるのが帳簿記帳となります。
帳簿とは?
以前に経理としての業務経験がある、といった方以外の会社員の方にとっては「帳簿」という言葉自体があまり耳慣れない言葉だという方が多いのではないでしょうか。そもそも帳簿とは、「企業のお金の流れをまとめたもの」です。言葉だけを聞くと複雑なものに思えるかもしれませんが、「何に」、「いくらのお金をいつ使ったか」をまとめていくという点では身近なところで「おこづかい帳」や「家計簿」と同じです。そう考えるとイメージもつきやすくなるのではないでしょうか。
帳簿にはいくつかの種類があり、大きく分けて「主要簿」と「補助簿」の2種類に別かれます。主要簿とは、企業におけるお金の流れのすべてを一目でわかるようにまとめたものです。そして補助簿とは主要簿に記載された特定の情報についての明細をまとめたものとなります。それぞれの特徴を詳しく解説いたします。
1.主要簿
「仕訳帳」と「総勘定元帳」の2種類によって構成されます。
仕訳帳とは、会計記録の対象となるすべての取引を取引発生日付順に「借方」と「貸方」の2種類に分けて記録する帳簿です。例えば、仕事で利用するボールペンを1本150円で購入した場合は借方には「消耗品費 150円」、貸方には「現金 150円」と記入していきます。つまり、仕訳帳を見返せば「いつ」、「何を買ったのか」がわかるようにわかるようになっています。
仕訳帳がすべての取引を日付順にまとめたものであることに対し、総勘定元帳は仕訳帳に記載したすべての取引を勘定科目ごとに整理したものです。日付順にまとめた仕訳帳だけでは現時点でその企業の現金がどれくらいあるかがわかりませんが、総勘定元帳では「現金」という科目を見れば把握することができます。つまり、総勘定元帳は企業の財務状態を把握するためにとても大事な帳簿です。企業経営において重要な損益計算書や賃借対照表などの決算書類は、この総勘定元帳をもとに作成されます。
2.補助簿
仕訳帳に対し補助簿は主要簿に記載された情報をさらに細かく、わかりやすくまとめた帳簿となります。具体的には現金の流れを記載した「現金出納帳」や、後日支払う予定のある商品を購入した際の「買掛帳」やその逆に後日回収する予定のある売上を記載した「売掛帳」、パソコンなど事業のために使用することを目的として購入した固定資産を管理するための「固定資産台帳」などがこれにあたります。
青色申告で特別控除を受ける場合は、主要簿である仕訳帳と総勘定元帳があれば問題ありません。ただ、必要に応じて以下の補助簿も準備しておくと良い場合もあります。以下で紹介いたしますがこれらは会計ソフト等を使えば手間なく作成することができます。
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記帳とは?
記帳とはその名の通り「日々のお金の流れを帳簿に記入していくこと」です。控除額の大きい青色申告を受けるためには、控除額の大きい順に「複式簿記」「簡易簿記」「現金主義簡易式簿記」の3種類のいずれかの方法で記帳を行うことが必要となります。
1.複式簿記
青色申告の中でもっとも控除額の大きい65万円控除を受けるために必要なのが複式簿記となります。複式簿記の「複式」とは、企業における日々のお金の流れを借方と貸方の2つの側面で記帳することを意味しています(=仕訳帳)。複式簿記を行うと仕訳帳と総勘定元帳を作成できるため、その企業の財政状況を正確に把握することができることになります。このため控除額の大きい青色申告にとっては必須となっています。
2.簡易簿記
複式簿記に対してお金の流れを2面に分解しないのが簡易簿記です。簡易簿記の標準的な書類としては現金出納帳や売掛帳、買掛帳、固定資産台帳などがあります。簡易簿記では、賃借対照表が作成できないため企業の財政状況を正しく把握することができません。そのため簡易簿記の場合は複式簿記とは大きく金額が異なり最大控除額10万円となります。
3.現金主義簡易式簿記
また限定的なものとして、前々年度の所得が300万円以下である場合の方にのみ対象となる現金主義簡易式簿記という記帳方法もあります。現金主義簡易式簿記の場合、現金出納帳のみで申告が可能ですが最大控除額は簡易簿記と同じ10万円となります。
記帳時の基本ルール
ここでは、青色申告を行う際に必要な複式簿記を記帳する際の基本的なルールについて説明します。記帳のベースとなるのは仕訳帳になりますので、まずは仕訳帳の正しい記入方法を知ることが重要です。また仕訳帳を記入するために、借方・貸方のルールと勘定科目を正しく理解しておくことも忘れてはいけません。
1.借方・貸方のルール
仕訳帳を作成しようとすると、対象となる取引が借方・貸方のどちらにどう記載すればいいかわからなくなってしまう方も多いかと思います。そういった方には以下の5つのルールを覚えておけばもしものときも混乱せずに記載をすることができます。
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- 1.資産が増えた時は借方に記入、資産が減った時は貸方に記入
- 2.負債が増えた時は貸方に記入、負債が減った時は借方に記入
- 3.資本が増えた時は貸方に記入、資本が減った時は借方に記入
- 4.費用が発生した時は借方に記入
- 5.収益が発生した時は貸方に記入
2.勘定科目について
仕訳を正しく行うためには勘定科目について知ることが重要です。勘定科目は非常に多くの種類がありすべてを覚えるのは大変ですが、青色申告でよく使う勘定科目を以下で5つご紹介します。
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- 1.消耗品費:事業に必要な文房具や備品で10万円未満のもの
- 2.減価償却費:購入金額が10万円を超えるもの(パソコン、カメラなど)
- 3.通信費:携帯電話の通信費や郵便ハガキ等の費用
- 4.接待交際費:事業に関係のある会食費用など
- 5.租税公課:税金の支払い関係
会計記帳代行サービスの検討もおすすめ
ここまでは帳簿の種類や記帳方法について説明してきましたが、中には「難しくて自分にはとてもできそうにない」と感じた方もいるかもしれません。
そんな人にオススメなのが会計記帳代行サービスです。会計記帳代行サービスを利用すると、日々の仕訳を記入していくだけで総勘定元帳や賃借対照表、確定申告書までをほぼ自動的に作成することができます。大幅な業務効率化を実現することも可能となりますし、数値計算ミスなども防ぐことができますので会計記帳代行サービスを利用するのもひとつの手段です。