融資で必要な将来を予測する「収支計画書」
はじめに
銀行から融資を受ける場合、いくつか必要書類を提出しなければなりません。その必要書類の中のひとつが、収支計画書です。収支計画書は何のため、どのように作成するものなのか。作成の方法とポイントを紹介します。
▼目次
- はじめに
- 収支計画書とは?なぜ必要?
- ・収支計画書が必要なわけ
- ・損益計算書との違い
- 収支計画書は自分で作成できるの?どうやって?
- ・エクセルが便利
- ・テンプレートを活用しよう
- 収支計画書の書き方の手順
- ・収支計画書の作成は年と月のものを
- ステップ1.経常利益を出す
- ステップ2.売上を予測する
- ステップ3.経費を出す
- まとめ
収支計画書とは?なぜ必要?
収支計算書は、将来の収支を予測する書類のことです。売上や仕入、経費などを具体的に数値化し、税引き後の利益がどのくらいになるかシミュレーションできます。借入金の返済を組み込めば、毎月の返済は問題ないか仮に計算することも可能です。
将来的に採算がとれるのかという内容の書類になるため、将来の返済根拠を知りたい銀行の融資などで必要になる書類のひとつでもあります。
・収支計画書が必要なわけ
収支計画書は融資で必要な書類と紹介しましたが、融資を受けない場合でも作成して損はありません。特に、会社を設立した当初、新たなビジネスを展開するときなど新たな局面を迎えるとき、これからどうなっていくか、将来を考えるのに役立ちます。
将来の収支がシミュレーションできるということは、将来どこでお金が必要か可視化されるので、資金を確保すべき時期に準備ができるということです。さらに、この先ビジネスを展開していって、採算が取れるかなど資金の流れを予測できます。
たとえば、月々の費用に対して、店舗が狭いことで採算が取れないことがわかれば、契約段階ならもっと広くて条件のよい物件探しもできるはずです。収支計画書は単に目標で作成するのではなく、現実ベースで客観的に作成するものなので、問題点が浮き彫りになりやすく、早めの事業の修正にもつながります。
・損益計算書との違い
収支計画書と似た書類に、決算書類のひとつである損益計算書があります。一見すると、売上、仕入、経費、当期純利益、税引き後の当期純利益と収支計画書と記入する項目はほとんど同じです。しかし、収支計画書とは明らかに違う部分があります。
損益計算書は、現実にあった売上や仕入、経費などをもとに作成するものだということです。損益計算書は、前年、あるいは前月のように過去に発生した取引によって作成します。つまり、損益計算書は過去を振り返るためのものであるということ。未来を予測する収支計画書とは別ものです。
ちなみに、損益計算書を含んだ過去の決算の書類も融資で必要になりますが、金融機関側は、これまでの営業成績をみて今後も返済できるのかという根拠のひとつとして確認しています。
収支計画書は自分で作成できるの?どうやって?
収支計画書がどういうものか紹介しましたが、自分でも作成することができます。作成方法としてどんなものがあるか、自分で作成するのに便利な方法を見ていきましょう。
・エクセルが便利
収支計画書の作成で便利なソフトが、エクセル(Excel)です。エクセルをおすすめするのは、数式や関数を入れることによって自動計算ができるため。
計算方法がある程度確立されている項目なら、計算式を入れておけば、数字を変えても瞬時に反映されるので便利です。1カ月単位の収支計画書から1年単位の収支計画書も簡単に作成できます。
さらに、入力もセルといわれる四角マスに入力する形なので、表の体裁もきれいに保て、印刷して見返すときにも便利です。
・テンプレートを活用しよう
収支計画書の作成にエクセルは便利ですが、自分で1から作成しようとすると、どんな項目を設定すればいいのか困ることがあります。エクセルに慣れていても、1から作成するのは結構面倒です。
そんなときに活用できるのが、収支計画書のテンプレート。項目がすでに作られており、あとは数字を入力するだけなので、作業に慣れていない人にもおすすめです。テンプレートを選ぶなら、設定する項目が明確で、シンプルなものが使いやすいでしょう。
ただし、テンプレートがあっても収支計画書について理解していないと、無駄な項目があったり、まったく違う項目に入力してしまったり、設定の自動計算が反対に計算を邪魔したりと問題も発生します。銀行の融資でも活用できるようなしっかりした収支計画書を自分で作成するのは意外と難しいものです。
収支計画書の書き方の手順
収支計画書はどのように作成するのが正しいのでしょう。書き方の手順を、4つのステップで紹介します。
・収支計画書の作成は年と月のものを
まず作成したいのが、年単位の収支計画書です。先に年で区切って作成するのは、年間の売上や経費の感覚が年商などで測れ、感覚的にわかりやすいため。実際に融資で提出するのは1カ月ごとの収支計画書を3年分ですが、先に年単位の収支計画書を作ることで、月に反映する際落とし込みやすくなります。
年単位で収支計画書を作成した後、月単位のものを作成するという流れです。月単位に直す場合は、固定費に関しては12等分で問題ないですが、変動費や固定資産税のような税金など定期的に発生するものは12等分ではなくしっかり計算する点に注意しましょう。
ステップ1.経常利益を出す
経常利益とは、営業にかかわる収益から費用を差し引いた営業利益よりさらに、借入金利息など営業外の収益から営業外の費用を差し引いた利益のことです。会社全体の利益の指標になります。
借入金の希望の2分の1の額を目安にして設定するのがおすすめ。売上や経費など細かい部分を出す前に経常利益を出すのがポイントで、大まかな利益の目安を出してから逆算する形で、売上などを出していきます。注意したいのは、過大に利益を盛らないことです。
ステップ2.売上を予測する
経常利益をだしたら、次に売り上げを予測していきます。売上は採算がとれる目標ではなく、売り上げ根拠を目標に作成していくのがポイントです。
店舗型の販売店なら売上スペースをもとに、飲食店などのサービス業なら客単価や客席あるいは回転数をもとに、清掃業など労働がお金に変わる事業なら従業員数をもとに計算するのが現実的です。融資を行っている、日本政策金融公庫の売上予測が参考になります。
なお、売上予測をする場合は、最低限の売上を出して現実的に可能かも合わせて確認しておきましょう。
ステップ3.経費を出す
売上を出したら、細かな経費を出していきます。家賃や駐車場などの固定費、水道光熱費や通信費などの変動費を洗い出しましょう。従業員に支払う人件費、代表など役員に支払われる役員報酬も経費に算入しなくてはなりません。
役員報酬は、大きな額を設定するのではなく、最低限必要な額にとどめておきましょう。はじめに役員報酬を過大に設定すると採算が取れなくなることがあります。なお、ライセンス料や発送費など業種ごとでかかる費用にも注意が必要です。一般的な項目ばかり見ていると、特殊な項目を見落としてしまいます。
まとめ
収支計画書は、融資を受ける際はもちろん、事業計画を立てる場合にも重要な書類です。しかし、作成する際の項目がわかりにくかったり、手順が難しかったり、作成段階で行き詰ってしまうこともあります。
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