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起業時・事業開始前にできる資金調達は?方法やポイントを整理しよう

はじめに

起業時には、店舗設置や事務所設置などにかかる経費や当面の運転資金など、要所で資金が必要です。ではその資金を集めるためには、自己資金のほかにどんな方法があるのでしょうか。起業時・事業開始前にできる資金調達方法を把握し、起業予定の事業に適した方法を検討してみましょう。

▼目次

起業時や事業開始前には、計画的な資金調達が必要

事業形態や規模にもよって金額は変動しますが、起業時にはある程度まとまった資金が必要です。“資金は会社の血液のようなものだ”とたとえられることもあるように、会社を円滑に運営し、事業を安定化させていくのには欠かすことのできないお金です。そのため、起業時や事業開始前には、計画的な資金調達が必要不可欠です。たとえば、会社の登記一つをとっても、登録免許税や認証手数料などで約25万円程度費用がかかります。

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なぜ十分な資金調達が必要なのか?

会社の事業には、予想しなかったようなトラブルや非常事態が起こる可能性があります。特に事業がまだ軌道に乗っていない起業したばかりの頃はその可能性も高いため、不測の事態に備えて資金調達は十分にしておく必要があります。

極端な話でいうと、登記費用など最低限の経費をのぞいて個人事業として独立し、自分自身のスキルをweb上などで売るだけであれば、経費はほとんどかからないかもしれません。その場合は起業にあたっての自己資金は差し迫って必要にはならないでしょう。
しかしもし新事業が早々に軌道に乗り、事業規模を拡大してほしいというニーズが増えた時に、十分な資金がなく自転車操業で稼働していたなら、新たなビジネスチャンスを逃してしまうことになりかねません。

なので起業時に十分な資金調達をおくことは、会社がピンチに陥った時にも事業拡大の時にも大いに役に立ちます。具体的にどのようなシーンで役立つのか、2つを例に挙げて見てみましょう。

1.設備投資のため

起業時の資金調達にはリスク回避や新たなビジネスチャンスを掴む意味合いもあるとはいえ、本来の目的は新事業を興すためあるということに変わりはありません。具体的に資金を投じなければならないのは、事務所設立、店舗設置、それらの施設の備品調達など、事業を始める上での「ハード面」の整備費用です。

店舗を持つ場合や、何かユニークな製品やソリューションを提供する場合、ハード面にあたる店舗の質や機械の性能は、その後の事業成果に大きな影響を与えるはずです。提供するサービスや製品は、その企業の顔ともいえるものです。まとまった額の初期投資には迷いや不安も生じるものですが、この部分に不安なくきっちりと資金をあてるためにも、十分な資金調達は重要です。

2.運転資金のため

黒字が見えてくるまでの最初の数ヶ月間の運転資金や、最初の1ヶ月間事業を行うための経費は、新たに事業を始める上で不可欠なものです。当初の事業計画よりも赤字期間が長引く可能性や、新たな広報活動の可能性などもあらかじめ想定し、事業開始後の運転資金にはやや多めにあてておくことが肝要です。

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創業や事業開始前にできる、資金調達方法

資金調達の方法は、大きく分けて4つあります。自己資金やクラウドファンディングなどからの「出資」、家族や友人・知人から提供してもらう「個人での借り入れ」、銀行を始めとする金融機関からの「融資」、国や自治体が行う返済不要の「補助金・助成金」です。

1.自己資金

最も基盤となる資金調達の方法が、「自己資金」です。いわゆる「開業のための貯蓄」ですが、創業者自身のお金を資金調達に回すため「出資」のひとつと考えられます。自ら貯めた資金であるため、事業開始後の融資返済に追われずに済むのがメリットです。ただし、自己資金100%で創業しようとなると、資金を貯めるまでの期間が長期化し、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあります。
創業にかかる資金総額のうち、自己資金の割合は平均して3割程度といわれています。つまり1,000万円の開業資金が必要なら、300万円を自己資金として調達するのが目安となります。

2.銀行・信用金庫からの融資

融資先としてまず思いつくのが、銀行や信用金庫です。しかし、これらの金融機関は、基本的にその会社の事業実績をもとに融資の可否を検討するため、創業資金の借り入れとしては、通常時の融資よりも難しいといわれます。特にメガバンクはこの傾向が強くあります。反対に地域密着型の信用金庫は、創業時の融資が若干受けやすい傾向にあるものの、行政が支援する融資制度などを利用する方が実現性は高く、創業時の資金調達としてはメジャーです。

銀行や信用金庫と事業者の間に自治体などが関与する「制度融資」は、一事業主として金融機関から融資を受けるよりも自治体の力を借りることで融資を受けやすくなるため、ぜひ検討しておきたい制度といえます。

3.日本政策金融公庫からの融資

実は銀行・信用金庫からの融資よりも創業時の資金調達として実現性が高いのは、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を利用した資金調達です。日本政策金融公庫は政府系の金融機関で、新事業の積極的な支援によって新しい産業の活性化を促す役割を担っています。

「新創業融資制度」は3,000万円(うち運転資金1,500万円)が無担保無保証人の融資制度で、条件として自己資金割合は1/10以上となっており、比較的条件のハードルが低く、自己資金が少なくても不利にはなりにくい仕組みです。また融資決定までの期間が3週間程度と早いことも魅力の一つで、例えば飲食業などで好条件の物件が見つかった時にも利用しやすいようです。ただし、利率は2.26~2.85%とやや高めです。

4.創業補助金

原則返済の必要がない「補助金・助成金」は、まとまった額にはならなくとも、創業資金の足しとして、ぜひチェックしておきたい制度です。創業時には、創業補助金が活用できます。これは、創業にかかる経費を国が負担してくれる経済産業省系の補助金です。
たとえば平成29年度の場合は、外部資金調達がない場合50万円以上100万円以内、外部資金調達がある場合は50万円以上200万円以内の範囲で、経費の2分の1が補助されます。ただし注意点として採択率は3割程度であること、補助金交付は後払いなので一旦は経費のための資金を用意しなければならないことです。

その他、対象者の層を絞った起業時の補助金や、地域活性化のため自治体などが主導する補助金・助成金など様々もあります。補助金や助成金だけで資金調達を完了することは難しいかもしれませんが、こうした行政側の支援をうまく活用するのも、資金調達の上手な方法です。

その他.ベンチャーキャピタルからの出資

実績をもとに融資をする銀行や信用金庫に対して、その企業の事業価値や将来性なども考慮して融資を判断するのが、ベンチャーキャピタルです。これは、会社の資本と引き換えに出資を受け入れる方法であることから、株式上場を前提とした会社に有利な資金調達の方法です。新しい技術やビジネスモデルを中核とするイノベーティブな企業や、リスクは大きいけれども急速な成長が期待される企業などが出資を検討する傾向にあります。

単独のベンチャーキャピタルから数百万〜数千万規模の出資を受ける場合と、複数のベンチャーキャピタルからファンドを通して億単位で出資を受ける場合があります。いずれにせよ、会社の資本と引き換えに出資を受ける以上、その後の利益分散などの面でリスクの伴う資金調達でもあるため、慎重な判断と綿密な計画、話し合い、お互いの信頼などが必要です。

その他.クラウドファンディング

インターネットが重要なツールとなった現代では、インターネットを経由して不特定多数の人から資金調達を受けることができるようになりました。このクラウドファンディングには、「寄付型」、「購入型」、「融資型」、「ファンド投資型」、「株式投資型」の5つがあり、募集したい資金の形態や規模、リターンの種類に合わせて自由に設定することもできます。

ただし、金融機関からの融資判断などがない分、信頼して投資してもらうためには、事業計画にはさらに具体性・計画性・実現可能性が求められます。また希望する額の資金調達のためには、クラウドファンディングへの支援を促す広報の充実も必要です。

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事業形態や規模などから様々な方法を模索しよう

これまで紹介してきたように、起業時に必要な資金の調達方法は、銀行からの融資の他にもいくつも方法があります。それぞれにメリット・デメリット、条件などが異なるため、新事業の形態や規模、自己資金の額などから総合的に判断しましょう。

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