起業家人材に学ぶ、事業成功に重要な4つの思考法とは?
はじめに
突然ですが「アントレプレナーシップ」という言葉を知っていますか? 耳なじみのない横文字だと思った人もいるかもしれませんが、日本語に訳すと「起業家精神」です。起業家精神は“新しい事業分野を切り開くための精神”と言われています。今回はビジネスマンとして身につけたい起業家人材の思考法について、詳しく掘り下げていきます。
▼目次
起業家人材とはどういう人物を指すのか?
「こんな商品があったら売れるのでは…」、「こんなサービスをビジネスにできないだろうか…」というような頭に浮かんだアイデアを、実際に具体的な製品やサービスとして作り上げ、新たなビジネスに挑戦する意欲を持つのが“起業家人材”。まさに、先に述べたアントレプレナーシップを持った人たちのことです。
起業家人材については近年日本でも注目が集まっています。理由として、日本の起業率が他国に比べて非常に低いということを受け、数年前から経済産業省が『起業家人材育成事業』として起業家人材育成の活性化を図っていたり、文部科学省も『次世代アントレプレナー育成事業』などを打ち出したりと、国レベルで起業家人材をもっと輩出しようという動きがみられていることが挙げられます。
それでは「起業家人材」とは具体的に、どのような精神・特徴を持つ人のことを指すのでしょうか?社会情勢と照らし合わせながら、見ていきましょう。
創造意欲が高く、リスクを恐れずに積極的に挑戦する人
起業家人材は、独立してビジネスを起こす人はもちろんですが、今では大企業の一メンバーとしても必要な人材といわれています。実際にソニーでは社内から起業に適した人材を発掘し、迅速な新規事業の育成につなげる『新規事業創出プログラム』というものを実施しました。
技術革新や、経済のグローバル化に伴い、ビジネスにおける課題はより高度で複雑なものとなり、スピード感を持った対応が求められています。そのため大企業や優良企業であっても、既存のビジネスに頼るだけでなく、新たなビジネスを常に見出し成長させ続ける必要が出てきています。製品自体のライフサイクルも短くなっている傾向も見られ、既存の商品やサービスをより進化させ、顧客を満足させる新しいものを生み出す必要性が高くなっているとも言えます。
また、企業も自発的に経済活動に取り組む人材を評価するようになってきました。近年、終身雇用や年功序列といった日本の古き良き時代のシステムは崩壊しつつあります。
そのような状況を受けて、言われたことしかやらない(できない)社員の評価は低く、自ら率先して企業にとってメリットを生み出せるような人材を求めているのです。失敗を恐れることなく、何かを生み出そうという意識を持ってチャレンジする起業家人材こそが、いまの社会において必要とされている人材であるといえるでしょう。
リーダーシップを持ち、最適なビジネスプランを立てられる人
「起業家精神」という意味を持つともいわれるアントレプレナーシップ。“業”を“企てる(=計画を立てる)”人ということになりますが、これは精神論にはとどまらず、経営資源にとらわれることなく、機会を追求するプロセス(姿勢)であるということも定義されています。
例えば、新規ベンチャー事業を立ち上げたとして、そちらに完全移行するだけではなく、既存事業を含むすべての事業をうまく管理・運営する能力があれば申し分ない人材であることは間違いありません。新規事業に関してリーダーシップをとりながら、既存事業を含めた経営全体についても正確な判断ができるということが、起業家人材に求められるスキルの1つでしょう。
起業家人材が持つ、成功のための思考法
長年にわたり起業論や起業家について研究しているサラスバシー教授は、優れた起業家の思考パターンを分析し、『エフェクチュエーション』という理論を提唱したことで注目を集めました。ハーバードビジネスレビューでも取り上げられたこの理論は、「これからの時代はこの『起業家的発想』が求められる」と言わしめた考え方です。MBA的思考と比較しながら、その思考モデルの4つの特徴を紹介します。
1.特に固定的な目標は設定しない
「目標を設定しない」と聞くと意外な印象を受けるかもしれませんが、よく考えると非常に現実的な思考です。MBA的思考では、「初めに何か具体的な目標を設定し、そこに対して必要な手段を考えていく」という流れである一方、起業的思考で求められるのは「手段から目標を設定していく」という流れで、まったく正反対の考え方になります。
ただ「手段から目標を設定していく」ということは、まず「自分に何ができるのか」ということを考え、「とりあえず何かやってみる」というリスクを恐れずに創造することにつながります。先に述べた“起業家精神”の基本に当てはまる考え方だと言えるでしょう。
2.自分の資産や能力などの制約条件に応じてビジネスを展開する
外部からの資金調達に頼ることなく、地道にビジネスを育てることも起業家の手法の特徴です。MBA的思考では、目標設定をしたら、それを達成するために必要な手段は何かを考察するため、そこで資金調達という方法もほぼ必ずと言って良いほど挙がってくる選択肢です。つまりMBA的思考では利益がいくら得られるかということを予測するのが当たり前ということです。一方、起業家は自分が持っている資源や能力を最大限に活かしていくということが特徴としてあるため、いくらまで損失が可能なのかを予測します。でこの点は非常に対照的であるといえるでしょう。
同じ予測でも現在の時点からプラスに振れることを予測するよりも、どこまでマイナスになってもよいのか、を予測することは、より現実的な思考が求められます。言い換えるとすれば、身の丈にあったビジネスを始めるともいえるかもしれません。
3.創業メンバーや関係者との間でのディスカッションやブレインストーミングを行う
起業家的思考で求められるのは、いざビジネスを始めたら、周囲の人たちとどんどん話し合ってさまざまな意見の中からひらめきを探していく思考法です。これは非常に流動的で柔軟性を必要とする方法であるといえるでしょう。
目標を具体的に定めていないからこそ、どんなアイデアでも「それ面白い」と感じるものを発見することが大切になってきます。評価や考察は二の次で、走りながらさまざまなものを試し、最適なものを選び取っていくというリスクを恐れない起業家らしい、チャレンジ精神がうかがえます。
またディスカッションやブレインストーミングという方法を取ることから、起業家は人と人とのつながりを重視するということもポイントです。
対してMBA的思考では必要な手段を考えた次のステップとして、選択肢をスピードやコスト、インパクトなどで評価し、適切な手段を選択するということが待っています。
4.新しく浮かんできたアイデアなどに即応して目標を変えていく
MBA的思考は未来を予測する方法を取りますが、起業家的思考では未来をコントロールする、ということがはっきり分かるのがこの考え方です。日々の業務や、クライアントや取引先の反応を受けて、自身のビジネスのためなら目標の変更や修正をいとわない。これも非常に柔軟性に富んだ思考法と言えるでしょう。
フレキシブルに対応できるからこそ、起業当初に予測していた未来とのブレ幅に一喜一憂することなく、より良い未来を構築していくということを目指すという考え方ではないでしょうか。
「とりあえずやってみる」思考へ変えていこう
以前のマーケティングとして主流だったのは「事前に情報収集や分析をしてマーケット環境を予測し、それに合わせた最適な方法を探る」という方法でしたが、現在はいままでの常識が通用せず、めまぐるしく変化が訪れる時代となりました。未来は変化するものであり、正確に予測するということがほぼ不可能に近いもの。そんな時代だからこそ考え方を「未来は自分で切り拓いていくもの」という方向にシフトしなければなりません。
今回紹介した起業家思考を一言で表すのならば、「とりあえずやってみる」という、ごくごくシンプルなことではないでしょうか。自分の最大限できる範囲で周囲の協力してくれる人たちとコミュニケーションを取りながら、変化の激しい時代に柔軟に対応しつつ、自らや周囲にとって最適な環境を切り拓いていく。という多様な変化を受け入れる余地を持つことが起業家人材に必要とされる思考法なのです。
この思考法はつまり、「いまの自分には何ができるのか」ということを日ごろから意識して取り組むということであり、自身でビジネスを興す際はもちろんのこと、企業内で働くときでも活きてくる重要なものです。
言われたことだけをする「指示待ち」になるのではなく、自ら行動し自ら未来をつくりあげていきましょう。
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