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会社設立時に検討すべき!「合同会社(LLC)」が向いている業種

はじめに

はじめて会社設立する場合に考えるべきことの1つとして、どういった会社形態をとるのか、ということがあるかと思います。そのうちのひとつで、2006年の会社法改正によって新たな選択肢として加わった「合同会社(LLC)」は、そのメリットの多さから注目を集めています。ここではその「合同会社(LLC)」の特徴やメリット、株式会社との違いを紹介していきます。

▼目次

そもそも「合同会社(LLC)」とは?

2006年5月1日の会社法改正により導入された会社形態である「合同会社(LLC)」。アメリカ合衆国のLLC(Limited Liability Company)がモデルになったため、「日本版LLC」とも呼ばれています。

これまでは株式会社・合名会社・合資会社・有限会社の4種類の会社形態がありましたが、2006年の法改正により、会社形態は株式会社(株式会社と有限会社が統合された)と持分会社の2種類に分けられました。この持分会社に該当する形態の1つが合同会社で、そのほかには合名会社・合資会社も持株会社に該当します。
持分会社とは、比較的小規模な事業を運営する法人を対象に設けられた会社形態です。株式会社よりも会社運営に関する自由度が高く柔軟な経営ができるため、昨今注目を集めています。国税庁の2014年度調査によれば、39,405社の企業が合同会社として登記されており、今後も増加が見込まれています。2015年度には年間22,000社を超える合同会社が設立されており、法人設立の5社に1社が合同会社になっています。

もともと小規模事業の運営のために導入された合同会社ですが、経営の自由度の高さから、
有名企業の中でも合同会社という形態を選択した企業も多く存在しています。例えばAppleや西友、シスコシステムズ、ユニバーサルミュージックなどが合同会社を選択した代表的な企業として挙げられます。

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合同会社の特徴、メリット・デメリット

合同会社の一番の特徴は、すべての社員が出資者であるということです。株式会社では、出資を行う株主やそれによって構成される最高意思決定機関である株主総会と、会社の業務を執行する役割(代表取締役や取締役)は分離しています。一方でこの両者が一致しているのが合同会社です。

すべての社員が出資義務を負い、特に定めがなければ全員が代表権を持ち業務にあたります。ただし、経営の混乱を避けるために代表社員を選定することもあります。

・合同会社のメリット

・設立費用や運営にかかるコストが安い
合同会社の設立登記にかかる費用は、登録免許税6万円のみです。株式会社と違い定款認証も不要なため、かなり低コストで設立することができます。また、決算公告義務もないので、官報掲載費も不要です。

1.経営の自由度が高い

持分会社の1つである合同会社では、定款自治の範囲が広く、定款を自由に規定することができます。会社法に違反しない限りにおいて利益や権限の配分を出資額に関係なく設定することができます。また、出資者自らが社員となり業務執行を行うため、迅速な意思決定が可能です。

2.1人でも設立可能

合同会社は代表社員1人でも設立ができるため、個人事業主が合同会社を設立することにもメリットがあります。個人事業主の場合、所得税は累進課税となりますが、合同会社の場合は一定税率(所得が800万円以下なら22%、800万円以上なら30%)となりますので、節税効果もあります。また株式会社と同じく、特定の条件を満たせば、設立から2年間は消費税納税免除を受けることもできます(課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者)。

・合同会社のデメリット

・社員間で意見の不一致や対立が起きた場合に意思決定が遅くなる
組織運営の自由度が高い一方で、全員が出資者であり意思決定者であるという側面を持つため、社員同士で方針についての見解の不一致や対立が起きた場合は意思決定に逆に時間がかかってしまう可能性もあります。利益配分も出資額と関係なく設定できるからこそ、不満につながるリスクもありえるでしょう。

1.資金調達の方法が限定される

株式会社の場合は、増資による資金調達を行うことができますが、合同会社の場合はそれができません。事業開始後に大規模な資金調達が必要な場合は、株式会社の方が好ましいといえるでしょう。ただし、社債発行による調達は可能ですので、個人事業主よりは資金調達の方法が広いといえます。

2.信用面では株式会社に劣ってしまうリスク

合同会社は新しい形態であるがゆえに、認知度や信用面でやや劣る部分があります。あくまでイメージの問題ではありますが、人材を採用する際に敬遠されるリスクもあるかもしれません。ただし、現在では株式会社も資本金1円から設立できる状況ですので、徐々にこうしたイメージも払拭されていくと思われます。

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合同会社と株式会社の比較

まず、設立時にかかる費用を比較してみましょう。株式会社を設立する場合は登録免許税15万円と定款認証費5万円の計20万円がかかりますが、合同会社の場合は登録免許税6万円のみで登記することが可能です。定款も作成は必要ですが、定款認証は不要です。
また、株式会社では決算公告義務がありますが、合同会社では決算公告義務がないため、官報掲載費もかかりません。

代表者の任期についての考え方も株式会社と合同会社では異なります。株式会社では、代表取締役や役員の任期は原則2年と会社法で定められていますが、合同会社の場合は特に任期が決まっていないので、変更手続きなども不要です。
一方で、株式会社と合同会社でほぼ違いがないのが、資本金が1円から設立できる点です。。その他、社会保険の加入義務がある点や節税効果も、株式会社でも合同会社でも変わりはありません。

株式会社に比べて、設立にかかる費用を抑え、運営に伴って発生する手続きの手間が比較的少ないことが合同会社の特徴といえるでしょう。

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合同会社が向いている業種

下記2つの業種は、特に合同企業という形態が向いているといえる業種です。会社設立前にどのような形態にするか迷ったら参考にしてみてはいかがでょうか。

1.小売業、サービス業

スーパーや飲食店・サロン、食品メーカー・化粧品メーカーなど、一般消費者を対象とした事業では、会社形態が株式会社か合同会社かということよりも、そのサービスの認知やブランド力が重要です。そのため、こうしたビジネスには合同会社は比較的向いているといえます。Appleや西友、マックスファクター、コダックなどがそれに該当します。
さらに、世界中で事業を展開する外資系企業にとっては、運営にかかるコストが削減できることや、日本の会計監査基準に合わせる必要がないことなどのメリットもあるため、多くの企業が合同会社を選択しています。

2.不動産投資、FX

もともと個人で不動産投資やFXを行っていた方にとって、法人登記は大きなメリットがあります。法人の場合は損失を次年度に繰り越すことができたり、得た利益に給与所得控除を利用することで節税効果を高めたりすることができることに加え、よりレバレッジの効いた取引を行うことも可能になるからです。こうした背景による法人登記の場合、設立費用が安く運営の自由度が高い合同会社は非常に向いているといえます。

例外にはなりますが、スタートアップ企業も合同会社に向いているといえます。
これまでにも述べた通り、経営の自由度が高く設立にかかる費用を抑えることができるのが合同会社の特徴であり、利益分配なども自由に決めることができるため、少人数で運営するスタートアップ企業には適した会社形態といえます。設立費用やランニングコストも抑えることができますので、まずは合同会社でスタートし、事業拡大に伴い最適な会社形態を選択する、といった方向性もひとつ選択肢として考えておくのもよいかもしれません。

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