会社設立後は忘れずに社会保険加入を。種類と手続き方法を解説
はじめに
登記申請が済んで会社設立が完了したらすぐにでも事業に集中したくなるでしょう。しかし、会社を設立した後はすぐに社会保険に加入する必要があるのです。ここでは社会保険に加入する必要性や手続きについて解説します。
▼目次
社会保険加入は義務!法律と未加入のリスクを解説
会社を設立したら社会保険に加入しなければなりません。これは任意ではなく、法律で決められているのです。株式会社も合同会社も健康保険法第3条や厚生年金保険法第9条などによって社会保険への加入が義務付けられています。
社会保険に強制的に加入しなければならないと定められている会社は強制適用事務所と呼ばれ、以下のいずれかに該当する事務所です。
・適用業種で従業員が5人以上の個人事業主
・業種や従業員数に関係なく法人
個人事業主の場合は業種や従業員数によって社会保険に加入するか否かが決まります。しかし、法人として会社を設立した場合は例え従業員が社長1人であっても加入しなければならないのです。社長1人しか社員がいないから社会保険については考えなくていいと思っている方は注意してください。
・未加入のリスク
加入義務があるにも関わらず社会保険に加入しなかった場合も、特に罰則などがあるわけではありません。しかし、年金事務所は未加入の会社に社会保険加入を推奨する通知書を定期的に送っているため、いずれ手元に届くことになるでしょう。
通知書が届いてから自主的に社会保険に加入すれば特に問題はありません。しかし、通知書を無視して社会保険未加入状態を続けると、年金事務所に呼び出されたり会社に立ち入り調査が入ったりと大事になります。
年金事務所には社会保険に強制加入させる職権がありますので、結局強制的に加入させられることになるのです。職権で強制加入となった場合は、過去に納めるべきだった保険料も遡って徴収されます。保険料の時効は2年ですから最大2年分の保険料をまとめて支払わなくてはいけません。一度に大きな負担がのしかかるため、きちんと会社設立後から社会保険に加入して保険料を支払いましょう。
・加入義務の例外
法人は基本的に設立後すぐ社会保険に加入する義務がありますが例外もあります。以下の場合は社会保険への加入を断られることもあるため注意が必要です。
・役員報酬がゼロ
・報酬が保険料を下回るほど低い
社長1人の会社で自身に給料として役員報酬を支払っていない場合は社会保険に加入できません。また、報酬が低い場合も同様です。
会社設立したら加入する社会保険の種類と役割
会社設立後に加入する社会保険には5つの種類があります。それぞれの役割を確認しておきましょう。
1.健康保険
健康保険は会社に勤めている従業員に適用される公的医療保険です。怪我や病気によって病院で診察を受けたときに健康保険証を提示しますが、この健康保険証は加入している健康保険協会から交付されます。
健康保険証を提示することで健康保険に加入しているという証明になり、自費で負担する医療費は3割で済むのです。また、定期的に健康診断を受けて健康維持に努められます。
中小企業は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入することが多いです。特定の業種向けに作られた総合型健康保険組合に加入することもできます。
2.厚生年金保険
厚生年金保険は年金制度の2階部分と呼ばれているものです。基礎年金である国民年金が1階部分で、それに上乗せする形で支払います。会社に勤めるサラリーマンや公務員などが加入し、原則として加入者は65歳から老齢厚生年金を受給できるとされています。
3.労災保険
労災保険は労働者災害補償保険の略で、労働者災害補償保険法に基づいて勤務中や通勤中の怪我・病気に対して保険給付を行う制度をいいます。労働者を保護するために誕生した制度で労働保険の1つです。
怪我で治療を受けたときの療養給付以外に、療養のために休業するときの休業給付や障害が残ったときの障害給付など細かく補償されます。労災保険はパートやアルバイトも含めて従業員を1人でも雇った場合に加入する義務があるため覚えておきましょう。
4.雇用保険
雇用保険は労働保険の1つで労働者が失業したときに生活や雇用の安定のために給付を行う制度です。失業したとき以外に、育児や介護を理由に休業を余儀なくされたときにも利用できます。
雇用保険は週の所定労働時間が20時間以上で31日以上雇用の継続が見込まれる従業員を1人でも雇った場合に加入する義務が生じるため、覚えておいてください。
5.介護保険
40歳以上の方は介護保険にも加入しなければなりません。高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして介護保険が創立されました。自分が介護を必要としたときに介護費用を最大で9割負担してもらえる制度です。
会社設立後社会保険加入のために必要な手続き
社会保険加入のために必要な手続きは種類によって異なります。必要な書類や期限などを確認しておきましょう。
1.健康保険、厚生年金保険
健康保険や厚生年金保険は会社設立後5日以内に必要な書類を年金事務所に提出します。必要な書類は以下のとおりです。
・新規適用届
・新規適用事業所現況書
・被保険者資格取得届
・健康保険被扶養者(異動)届
・国民年金第3号被保険者の届け出
その他、添付書類として以下のものが必要です。
・会社の登記簿謄本
・保険料の口座振替依頼書
・事務所の賃貸借契約書の写し
ほかに以下の書類が必要になることがあるので合わせて準備しておきましょう。
・出勤簿やタイムカード
・労働者名簿
・賃金台帳
・源泉所得税の領収書
2.労災保険
労災保険の手続きは、まず従業員を雇用した日の翌日から10日以内に保険関係成立届と以下の添付書類を労働基準監督署へ提出します。
・会社の登記簿謄本
・労働者名簿
・賃金台帳
・出勤簿
さらに従業員を10人以上雇う場合は就業規則届の提出も必要です。
保険関係が成立したあとは、50日以内に労働保険概算保険料申告書を各都道府県の労働局に提出します。
3.雇用保険
雇用保険の加入手続きは公共職業安定所(ハローワーク)で行います。従業員を雇用する事業を始めた日の翌日から10日以内に雇用保険適用事務所設置届と以下の添付書類を提出しましょう。
・会社の登記簿謄本
・労働者名簿
・賃金台帳
・出勤簿
・労働保険関係成立届の控え
また、従業員を雇用した日の属する付きの翌月10日までに雇用保険被保険者資格取得届を合わせて提出してください。
まとめ
登記が完了して一安心したくなってしまいますが、社会保険の加入手続きを忘れてはいけません。あとから本業に支障が出ないよう事業を本格的に始める前に必要な手続きを終わらせてしまいましょう。