起業する前にチェック!仕事を始める手続きや許可について
はじめに
起業をするにあたって、事前に必要な手続きがいくつかあります。内容は業種によって異なり、許可を得ていないと刑事罰が科されてしまう場合も中にはあるので、もれのないようにチェックしておくことが重要です。今回は、起業する際に必要な手続きや許認可事項について見ていきます。
▼目次
起業する前には、必要な手続(許可・登録・届出・認定等)がある
ある特定の事業を行うために、国や地方自治体などにしかるべき手続きをとって許可を得ることを「許認可」といいます。届け出をするだけでOKなものもあれば、届け出たうえで、定められた条件をクリアしてはじめて商売を始められるもの、審査に合格することが必要なもの、中には特定の資格が必要なものまでその種類はさまざまです。
まずは、起業を考えているビジネスに必要な手続きがあるかどうかを調べましょう。
必要な手続きを行わないとどうなる?
では、もしも必要な手続きを行わなかった場合はどうなるのでしょうか?
起業をするのは自由で、誰もが平等に事業を行う権利があります。その一方、業種によっては行政が監視や調整を行わないと、顧客をはじめとする第三者に被害を及ぼしてしまうことも考えられます。そのような事態を防ぐため、さまざまな手続きが必要となっているのです。
必要な許認可を得ないままに起業・営業開始をしてしまうと、営業停止になったり、場合によっては刑事罰を科されたりすることもあります。また、税に関しての申告を怠ってしまった場合、罰金を支払う必要があったり、延滞税などが発生したりすることがあるので注意が必要です。
・個人事業を開業する場合に必要な手続き
まずは、「個人事業主」として開業する場合に必要な手続きをみてみましょう。
事業を始める際に最初の選択としてでてくるのが、個人として事業をはじめるか、法人を設立してはじめるかという選択です。個人事業主とは、その名の通り個人で事業を行う人のことを差します。必要な手続きは、納税地を所轄する税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するのみです。(最大65万円の控除が受けられる青色申告を行う場合は、同時に「青色申告承認申請書」を提出します)
原則として、事業の開始、廃止等の事実があった日から1ヶ月以内の提出が義務付けられています。遅れた場合でも受理はしてもらえるようですが、できるだけ期間内に提出できるよう準備しておきましょう。開業後引っ越しなどで住所が変わった際も、速やかに届け出ることが必要です。
商売別での必要な各種手続
次に、さまざまな業種で営業を行う際に必要な手続きをそれぞれ具体的にみていきましょう。
1.飲食業
飲食店をはじめる場合、「食品衛生法」によって「食品営業許可」が必要となります。営業を開始する前(店舗完成の10日前までが目安)に、管轄する保健所へ「食品営業許可申請」を提出します。
また、店舗の収容人数が30人を超える場合には、さらに「防火管理者選任届」を消防署に提出する必要があるので、店舗を構えるタイミングで収容人数は何名なのか必ずチェックしておきましょう。
そのほかにも、営業形態によって必要な手続きが多々あり、必要な資格もさまざまです。逆に手続きが必要ないケースもありますので、営業形態が固まったら事前に保健所に行って相談するともれがなく安心です。
2.運送業
トラックなどで荷物を運送するビジネスをはじめるにあたり、普通トラックの場合は「一般貨物自動車運送事業」が必要となります。営業所を置く運輸支局へ申請をした後、内容審査が行われ、許可決定へ至ります(同時に、法令試験を受験して合格する必要があります)。
なお軽トラックを使用する場合は「軽貨物自動車運送事業」の許可を得るために、同じく運輸局への申請が必要です。
また、「運行管理者」及び「整備管理者」などの届け出が必要となることがあるため、詳細を確認しておきましょう。
3.貸倉庫・トランクルーム
主に都心部では狭い住環境が多く、収納スペースが不足しているために荷物をトランクルームに預ける人が増えています。また、書類や事務機器を保管するために、貸倉庫などを企業が利用しているケースも多く見られます。
このような貸倉庫事業を行うには、「倉庫法」に基づいて国土交通大臣が行う登録を受けなくてはいけません。また、「倉庫管理主任者」の選定が義務付けられています。
各種申請を行なった上で国土交通省によって優良と認定されたトランクルームは、「認定トランクルーム」と名乗ることができます。
4.中古品販売
中古品販売、いわゆるリサイクルショップの開業にも手続きが必要となり、「古物営業法」に基づく許可を必ず得なくてはいけません。許可を得るためにはまず出店地域の警察署の生活安全課防犯係に必要書類を提出、申請します。これはインターネット上で中古販売業を営業する際も同様です。次に申請書類の中にサイトのURLを記載し、プロバイダなどから送られてきた書面と共に提出します。
申請から許可が下りるまでは、通常1ヶ月半程度かかることが多く、一度で申請が通らないケースも決して珍しくありません。規則上、許可が下りるまでは開業できないため、余裕を持って申請を早めに進めておく必要があります。
5.酒類の販売・卸業
商売の中でも酒類を扱う際は、「酒税法」に基づき、販売場ごとに所轄の税務署長から「販売業免許」を受けなくてはいけません。
インターネットで酒類を販売する(2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として通信販売を行う)場合は、同じく税務署にて「通信販売酒類小売業免許」を取得します。販売できるお酒の種類に制限があるので、事前に確認しておきましょう。
6.ホテル・旅館
ホテルや旅館などの事業には、大きく分けて「ホテル営業」、「旅館営業」、「簡易宿所営業」、「下宿営業」の4種類があります。開業に際しては、都道府県知事(保健所設置市の場合は市長、区の場合は区長)から「旅館業営業許可」を受けなくてはいけません。
近年増加している「民泊」のように自宅の一部を利用する場合であっても、同様に旅館業法に基づく許可が必要です。実際に許可申請を行う前に、事前相談を求めている自治体が多いので、あらかじめ各都道府県の旅館業法相談窓口に相談しておくと安心です。
ほかにも、利用者や周辺住民の安全を確保するため、消防用設備の設置なども必要ですので、消防法もチェックしておきましょう。なお、地域によってはそもそも旅館業の立地を禁止している場合がありますので事前確認が必須です。
不安になったら専門機関に相談しよう
実際に手続きを進めていくうえで、どんな手順をとればいいのか、もれはないのか不安になることも多いものです。インターネットや書籍などを使い自分自身で全て調べることも一つの手ですが、管轄の窓口へ直接相談するのが一番早く、かつ正確な情報が得られます。電話でも話は聞けますが、店舗の図面などを見せながら直接アドバイスをもらうと、より確実です。
公的機関の相談窓口としては、まずは「商工会議所」や「商工会」を利用しましょう。商工会議所は市の区域に、商工会は町村部に設立された公的団体です。どちらも創業相談などを行っているので、気軽に問い合わせができます。
そのほか、中小企業庁による「中小企業・ベンチャー総合支援センター」や「都道府県等中小企業支援センター」などが各都道府県に設置されています。地方金融機関やNPO法人などでも起業相談を行っていることが多いので、最寄りの窓口を探してみてはいかがでしょうか。
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