【オーバーツーリズムとは?】問題点や持続可能な観光への対策をご紹介!
皆さんは「オーバーツーリズム」という言葉をご存知でしょうか?
オーバーツーリズムは近年問題視されており、海外だけの問題ではなく日本でもインバウンド需要の増加に伴い、オーバーツーリズムの問題は深刻化しています。
そこで本記事では、オーバーツーリズムとは何か、問題点や事例、対策をご紹介!
この記事はこんな方におすすめです
- オーバーツーリズムについて知りたい
- オーバーツーリズムの問題点が知りたい
- オーバーツーリズムの対策が知りたい
オーバーツーリズムとは?
旅行観光客が増えたことで話題になっているオーバーツーリズムについて簡単に解説します。
オーバーツーリズムについては、観光庁が以下のような定義をしています。
特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が、市民生活や自然環境、景観等に対する負の影響を受忍できない程度にもたらしたり、旅行者にとっても満足度を大幅に低下させたりするような観光の状況は、最近では「オーバーツーリズム(overtourism)」と呼ばれるようになっている。
このようにオーバーツーリズムとは、特定の観光地に訪問客が増えたことで、地元住民の生活や自然環境などに悪影響を及ぼす状況のことです。
オーバーツーリズムは『観光公害または観光過剰』ともいわれています。
このオーバーツーリズムはコロナ禍以降に出てきた問題ではありません。コロナ禍前から観光地を中心に問題視されていました。
日本では紅葉で人気の京都、スラムダンクの聖地として人気の鎌倉などはオーバーツーリズムの問題が起きています。
では、オーバーツーリズムは世界各地でどのような問題を起こしているのでしょうか?
ここからは、オーバーツーリズムの問題を具体的にご紹介します。
オーバーツーリズムの問題点
世界各地で起きているオーバーツーリズムの問題として、ゴミのポイ捨てや公共交通機関の混雑などが挙げられます。
オーバーツーリズムの問題点
- ゴミのポイ捨てによる自然環境の破壊
- 公共交通機関・施設の混雑
- 違法民泊・トラブルや犯罪などの増加
- 街の景観の悪化(観光施設の建設等による影響)
- 地元観光業の経済的損失(あまりお金を使わない観光客が増える)
- 住環境被害(居住地域が観光名所になる)
- オーバーツーリズムの影響で観光客減少
上記のような問題が世界の観光地で起きており、人気の高いビーチでは自然環境保護のために閉鎖するなどの状況も起きているようです。
自然環境への影響について
オーバーツーリズムの問題点として、自然環境への影響があります。
たとえば、観光地を自動車で訪れる観光客が増えると、車から排出される排気ガスが森林にダメージを与える可能性があります。
そのほかにも、観光客によるゴミのポイ捨てで観光地やビーチが汚れるなど、自然環境への影響は大きいです。
地域住民・経済への影響について
観光地に多くの観光客が訪れることは、経済面で考えればメリットのように感じます。
しかし、観光客が多く訪れると公共交通機関や施設が混雑の影響でパンクし、地域住民の生活に影響を及ぼします。
たとえば、日常生活でよく利用する電車やバスが混雑の影響でなかなか利用できなかったり、騒音被害に遭うケースもあります。
最近では日本に訪れた外国人Youtuberが、無賃乗車の動画を挙げたりなど、トラブルが増加することも考えられます。
お金を使わない観光客が増えてしまうと、地域経済が活性化することはありません。むしろ経済的な損失につながってしまいます。
将来的にどのような影響を与える?
- オーバーツーリズムの問題が解消されないと、将来的に観光客の集客が難しくなってしまい、地域経済が悪化してしまうリスクも考えられます。
観光客への影響について
オーバーツーリズムは『自然環境・地域住民・経済』以外にも、観光客への影響もあります。
もしかしたら皆さんも以下のような経験をしたことがあるのではないでしょうか?
- 観光客が多すぎて観光スポットをのんびりと楽しめなかった
- 公共交通機関が混雑していて、移動がスムーズにできず予定を変更せざるを得なかった。
- 行きたかったお店が混雑していて入れなかった
- 観光スポット周辺にゴミが落ちていて汚かった
このような経験をした観光客は、観光地に対しての満足度が低下するといわれています。
オーバーツーリズムはどうして起きるのか?原因は?
オーバーツーリズムの問題は断定することが難しいといわれていますが、オーバーツーリズムが起きる要因としては以下のようなものが挙げられます。
オーバーツーリズムの主な要因とは?
- インバウンド観光の急増
- インターネットやSNSの普及
- インフルエンサー、テレビなどの影響
- 交通手段や宿泊施設の選択肢増加
上記の中でも、近年ではSNSの影響力はとても大きいといわれています。
観光地の景色や観光スポットの写真を気軽に共有できるようになったことで、観光スポットに関する情報に触れる回数が増えたり、旅行に行きたい気持ちを触発するような影響が出ているといえるでしょう。
オーバーツーリズムの事例
オーバーツーリズムの問題と原因を紹介してきましたが、ここからは世界各地のオーバーツーリズム問題の事例を紹介します。
日本の事例
日本のオーバーツーリズム問題として、京都府と鎌倉の事例をご紹介!
京都府
日本では海外からの観光客の人気が高い京都府で、オーバーツーリズムの問題が顕著になっています。
京都は寺院、神社、伝統的な街並み、春の桜や秋の紅葉など四季折々の景色が楽しめます。
そんな京都には多くの観光客が訪れるため、混雑が極めて激しく、美しい京都の街の景観が損なわれたり、観光客の満足度や再来訪意向の低下につながることが懸念されています。
前述でもお伝えした通り、観光客が増加すると観光周辺は混雑し、ゴミの増加、地域住民の生活にも影響を及ぼします。
京都市観光協会ではオーバーツーリズムを解消するため、『オーバーツーリズム対策事業』が立ち上げられました。
主な取り組みとしては、観光インフラの整備や市民生活との調和、観光産業の育成などがあります。
鎌倉市
鎌倉は人気バスケットボール漫画『スラムダンク』の聖地としても有名です。スラムダンクにゆかりのある踏切周辺(鎌倉駅と藤沢駅を結ぶ江ノ島電鉄)には多くの外国人観光客が訪れています。
しかし、この踏切を撮影するために観光客が車道に広がる(飛び出し)などの迷惑行為が問題視されています。それ以外にも、ゴミの放置や騒音トラブルなども地域住民へ悪影響が出ています。
鎌倉市ではオーバーツーリズムを解消するために、エリア分散化やマイカー利用の総量規制などの対策をしています。
海外の事例
オーバーツーリズムは日本だけではなく世界中で問題となっています。ここでは『オランダ・イタリア・フランス』の事例をご紹介します。
オランダ(アムステルダム)
オランダの首都アムステルダムは、美しい運河、歴史的な建造物などがあり、観光地としても人気です。
そんなアムステルダムは、大麻と売春宿が合法化されており、イギリス人のバチェラーパーティーにも人気です。パーティーに訪れる人の中には、夜通しの飲酒や薬物乱用などが行われており、地域住民の日常生活に悪影響を与えているといわれています。
アムステルダム市当局はこの問題を解決するために、2023年3月から『Stay Away(こっちに来ないでの意味)』という迷惑観光客を歓迎しないキャンペーンを展開。
なお、このキャンペーンは18歳から35歳までの英国人男性観光客を主なターゲットとしています。
イタリア(ベネチア)
イタリア北部にある「水の都」として知られるベネチアは、観光客が増えすぎて世界遺産の地位が危ぶまれているといわれています。
年間2500万人の観光客がベネチアに訪れているといわれていますが、住民の数は減少傾向にあるそうです。
住民の数を上回る観光客がベネチアに訪れることで、以下のようなことが問題となっています。
- ゴミのポイ捨て増加
- 運河の汚染
- 水上バスなど運河の交通渋滞
また、ベネチアでは、2024年の春頃から歴史地区を訪れる日帰り観光客から、1日に5ユーロの入場料を試験的に徴収する計画が承認されました。
フランス
フランスは世界で最も人気の高い観光地ですが、オーバーツーリズムに対する懸念が高まっています。
特にパンデミック以降、観光地で時間もお金もあまり使わない観光客があふれかえっていることが問題視されています。
そのため、2023年6月18日にフランス観光相のオリビア・グレゴワール氏は、オーバーツーリズムの問題解決に向けた計画を発表しています。この計画には一部の人気観光地に対して、観光客の規制などが含まれています。
たとえば、マルセイユのカランク国立公園では、スギトンの入り江への1日の訪問者を400人に制限する予約システムを導入しています。
オーバーツーリズムの対策
オーバーツーリズムは、一部の地域住民だけで解決できる問題ではありません。
自治体が中心となり、民間企業と連携して積極的に対策を講じることが必要です。
以下はオーバーツーリズムの解消・緩和効果が期待される対策です。
- 観光客の制限
- 観光客分散化の推進
- 手ぶら観光の推進
観光客の制限
地域やエリアごとに観光名所があるものの、どうしても人気観光地に集中してしまいがちです。そこで効果が期待されているのが「観光客の制限」です。
観光客が激増したイタリアやクロアチアなどでは、旅行者の受入れを制限する取り組みが実施されました。そのほかにも2018年4月にフィリピンのボラカイ島では、一時的に島自体を封鎖するなどの対策が講じられました。
もちろん、この方法には観光産業の売上が減少してしまう可能性があります。
観光客の制限だけに頼るのではなく、持続可能な観光のために、民間企業もオーバーツーリズム問題の改善に向けて取り組む必要があります。
観光客分散化の推進
人気の観光地は近隣の地域と連携して、観光客を分散させることもオーバーツーリズムの対策として効果があるでしょう。
近隣の地域に、観光地としての魅力強化や交通機関などを整備することで、観光客が分散化し、繁忙期の人手不足や一箇所に集中してしまいがちの観光客を緩和できると思います。
ただし、この対策には予算をかけて、PRやSNS等で発信していくことも必要だといえますが、観光客の制限とは違って、売上が減少してしまうリスク低減、観光客の満足度が向上する効果も期待できるでしょう。
手ぶら観光の推進
手ぶら観光とは、荷物を持ち歩かずに観光できることを指します。オーバーツーリズムの問題解消や観光満足度の向上につながります。
移動中の荷物が減り身軽になることで、公共交通機関ではなく徒歩で移動する観光客が増え、公共交通機関の混雑を緩和させることが期待できます。
日本でも関西観光本部や近畿運輸局などが中心となり、「手ぶら観光」を推奨しています。
手ぶら観光は公共交通機関の混雑緩和だけではなく、スペースを占領する観光客の減少といった効果も見込めるでしょう。
まとめ
オーバーツーリズムは観光客の数が観光地のキャパシティを上回り、観光客によるゴミのポイ捨てや騒音、公共交通機関の混雑など、さまざまな問題が起きることです。
オーバーツーリズムはそのまま放置してしまうと、地域住民への影響だけではなく、経済面にも大きな影響を与えてしまうでしょう。
そのため、オーバーツーリズムの対策として、自治体と民間企業が連携することは欠かせません。そして、観光客の分散化や手ぶら観光の推進など、積極的に対策を講じる必要があります。
オーバーツーリズム問題に対応してきた国内外の事例や対策を参考に、適切な取り組みについて検討することが大切といえます。