自宅で起業・開業・独立する時に、最適な職種と仕事とは?
はじめに
いざ起業や開業、独立を決意したら、真っ先に考えなくてはいけないもののひとつにコスト面の問題があります。特にワークスペースに関しては、ビジネスが軌道に乗ってきたタイミングでオフィスを借りるのも一案ですが、はじめのうちは自宅を作業場とすれば、初期投資や余分な固定費を抑えることができます。そこで今回は、自宅で起業・開業するケースを例に、手続きの進め方やメリット・デメリットを見ていきます。
▼目次
個人事業主として起業する場合と、法人設立をする場合の違い
“一念発起して起業”ということであれば何はともあれ資金調達が必須だと考えている人も多いのではないでしょうか。確かに法人設立をする場合、諸々の費用がかかります。ただ会社法の改正により1円から資本金の設定が可能となったため、以前よりハードルが低くはなりましたが、やはり会社を立ち上げるのに初期投資がかかるのは事実としてあります。
そこで考えたいのが、個人事業主として起業する方法です。これから起業する場合、多くの方がまずは自分1人で仕事を始めるのではないでしょうか。個人事業主としての登録は、開業届に必要事項を記入し税務署に提出するのみで完了し、特別な費用は必要ありません。なので極端な話、思い立ったら今日からでも起業・開業をすることもできます。
また個人事業主として起業する場合、作業スペースや使用機器などに問題がなければ、自宅を事務所とすることで、もっとも出費に無駄がなくリスクも抑えることもできます。
自宅で起業する場合に向いている職種
では、どのような仕事が自宅での起業に適しているのでしょうか。ここでは、大きく分けて3つの職種を紹介します。
・デザイナー、プログラマー、ライターなどテレワーク系
自宅での起業にもっとも適しているのは、インターネットを使って仕事をする業種です。例としてデザイナー、プログラマー、ライターなどが挙げられます。これらの業種では、いわゆるフリーランスとして複数の企業や媒体と取引をし、作品や原稿などを納品します。
仕事をするのに必要なものとして、パソコン1台とインターネット環境さえあれば自宅でも出先でも仕事ができるため、近年注目されており、「テレワーク」とも呼ばれています。
・ショップ経営などネットショップ系
以前に比べ個人でネットショップを立ち上げることが容易な時代になりました。今では無料でネットショップを開設できるサービスも多く、手づくりが得意な人はショップ経営をしたりすることもできます。ネットショップの運営も自宅での起業に適しているというるでしょう。
一般的なショップ経営の場合は、在庫を保管しておくスペースが必要となり、また在庫を多く抱えることは経営リスクにも繋がるため相応のリスクがあります。しかしネットショップであれば受注してから生産に取り掛かることも可能なため、在庫管理を行いやすく比較的リスクが少ないことも特徴としてあります。
・自宅サロン、スクール、コンサル系
専門的な知識を持っているのであれば、塾講師やセミナー講師、コンサルタントなども自宅での企業に向いている職種のひとつです。子ども向けの学習塾や高齢者向けのパソコン教室など、フランチャイズ制で開業できる企業も多く、初期費用が抑えられることや、経営に関するノウハウが学べることもメリットといえます。
また、自宅でセミナーなどを開催するだけでなく、Skypeなどのツールを活用して、web上で遠方の受講者に向けて講座を開くケースも増えてきています。
自宅での起業は主婦や子育て中のママにもおすすめ
自宅での起業や開業であれば、仕事を辞めてからブランクのある主婦や子育て中のママたちにも十分可能です。同じく子育てママをターゲットとした講座やワークショップなどを開く場合、自分の子どもと一緒に受講者へレクチャーできる場合も多くあります。
また外での打ち合わせがない限り、学校から帰ってくる子どもを迎えることもでき、家事などもすきまの時間にこなせるので、家庭との両立がしやすいといえるでしょう。
自宅兼事務所の構え方
自宅を事務所として起業する場合、まずは個人事業主として登録が必要です。思っているよりもずっと少ないステップでできますが、あらかじめ頭にいれておおくべき情報もいくつかあるため、順に見ていきましょう。
・開業するまでの流れ
個人事業主として開業するためには、届出書を作成して最寄りの税務署に提出する必要があります(郵送も可能)。国税庁の公式サイトから「個人事業の開業・廃業等届出書」がダウンロードできますので、プリントアウトして記入、捺印して提出します。極端に言えばこれだけです。申請書に「屋号」を記入する欄がありますが、これは法人でいう「会社名」のことです。空欄でも受理してもらえるので、必要があれば記入をしてください。
住所欄には自宅住所を書けば問題ありません。ただし自宅が賃貸住宅、特にマンションの場合、賃貸借契約で自宅ビジネスの禁止を定めているケースがあるため、事前に確認しておきましょう。不特定多数の人が出入りするビジネスをおこなう場合は、特に厳しく取り決めがされていることもあります。たとえばテレワークなどの場合、特例として認められることもありますので、賃貸住宅を自宅兼事務所として利用する場合には、事前に家主(もしくは不動産業者)と相談しておくことが望ましいでしょう。
また、必要書類には入りませんが、起業をしたら自分で確定申告をしなければなりません。そのため、開業届と一緒に、最大で65万円の控除が受けられる「青色申告承認申請書」を提出する人が多いので、こちらも事前に調べておくと安心です。
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自宅事務所のメリット・デメリット
自宅を事務所として起業するケースについて、さまざまな視点から見てきましたが、改めてメリット・デメリットをまとめてみます。
<メリット>
・家賃や光熱費などの固定費が抑えられる
毎月かかる家賃や光熱費などの固定費、また作業に必要な家具や通信機器一式などを揃える初期投資も不要です。さらに、自宅を事務所とすると、使用面積に応じて家賃の何割かを経費として計上できます(家事按分)。電気代や通信費なども同様に計上できることも覚えておきましょう。
・通勤にかかる費用や時間を節約できる
事務所までの電車代もしくはガソリン代などがかからず経済的で、さらには通勤時間もないため、時間を有効活用できます。また、自宅件事務所への訪問者がいない限り服装も自由ですので、通勤用ビジネススーツなどの着用が不要である点も、メリットのひとつとして挙げられるでしょう。
・家事や育児、そのほかの副業と両立しやすい
自宅にいる間の好きな時間を仕事に充てることができるので、家事や子どもの送り迎え、学校行事などに参加するための時間調整がしやすい環境であるといえます。小さな子どもがいる場合も、保育園に預けず自宅保育を行いながら仕事をしている起業ママは少なくありません。余力がある人は、副業をおこなうことも十分可能です。
・人間関係のトラブルが起こりにくい
会社に勤めていたときのように上司も部下もいないため、人間関係のトラブルやそれによって生じるストレスも起こりにくいといえるでしょう。
<デメリット>
・仕事とプライベートの切り替えが難しい
好きな時間に仕事ができるということは、すなわち何時から仕事をしても、何時に終わっても自由ということです。つまり、自分を律することができないと、ついダラダラと過ごしてしまうといったこともあるかもしれません。
反対に、常に仕事に取り掛かれる環境であるがゆえに、夜中や土日につい仕事をしてしまうケースも少なくありません。オンオフをうまく切り替える必要があります。
・セキュリティ問題
事務所の情報=自宅情報となるため、名刺などに住所を記すことになります。第三者的に考えると、別の場所にオフィスを構えた場合に比べて、ビジネス上の信用度が下がる場合があることも念頭に置いておきましょう。
また、個人情報を公にする必要があるため、特に家族がいる場合は注意が必要です。自宅をサロンとして使う場合は、常に不特定多数の顧客が自宅を訪れることになるため、やはりセキュリティ面は十分に注意しておく必要があります。
・外出する機会が減り、外部との接触が少なくなる
通勤する必要がない分、外での打ち合わせなどがないと外出する機会が一気に減ります。その分、出会いの機会が減ることが予想され、新たなビジネスのヒントを得にくくなる可能性もあります。このデメリットを解消するためには、積極的に外部との接点を増やし、常にアンテナを張り巡らせておく努力が重要となります。