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【ベンチャー起業家向け】会社設立前に知っておくべき法人形態の種類

はじめに

「アイデアは十分、勝算もあり」と満を持して起業する場合、そして同様の仲間がいる場合は、ぜひ個人事業主ではなく会社設立を考えましょう。会社法改正により、以前よりも法人設立がしやすくなったと言われますが、具体的にはどのような手順を踏めばいいのでしょうか。事前に知っておきたい会社設立に関する知識についてみていきます。

▼目次

会社設立時の基本の流れ

まずは会社設立にあたっての基本の流れを把握しておきましょう。ここでは、株式会社の設立を想定して必要な手続きをご紹介します。

ステップ1:発起人、必要事項の決定、印鑑作成

まずは、会社設立のために中心となり進めていく発起人を決定します。発起人の人数は1名以上で上限はありません。
次に、会社の基本事項を決めていきます。「商号(会社名)・本店所在地・資本金額・事業内容・発起人の氏名及び住所・発行可能株式総数」の項目は、ステップ2で作成する定款の絶対的記載事項ですので、忘れないようにしてください。

続いて、印鑑を用意します。まず、法人登記に必要な会社代表印(法人実印)は必須です。そのほか法人の銀行口座開設のための銀行印、見積書や請求書などの書類に使う社印も用意しておくと安心です。さらに別途で発起人の実印・印鑑証明書も必要になるため、こちらも早めに準備しておきましょう。

ステップ2:定款の作成、認証

ステップ1で決定した会社の基本事項をもとに、定款を作成します。定款とは、会社のルールを述べたいわば憲法のようなもので、この定款に基づいて会社の活動がおこなわれます。定款は、紙ベース以外にPDFのような電子データでの作成も可能です。

定款作成が済んだら、公証役場にて定款の内容に間違いがないか、正式な手続きで作成されたものかをチェック(=認証)してもらいます。

ステップ3:資本金の払い込み、登記申請書提出

定款の認証が完了したら、次は出資金の振り込みに移ります。会社設立の手続き前で法人口座がないため、発起人は代表取締役の個人口座に出資金を入金します。(発起人と代表取締役が同一人物の場合は、自分の口座に自分で振り込むことになります)
入金が完了したら払込証明書を作成、そのほかの必要書類とあわせて法務局へ登記申請をして完了です。

上記で説明いたしました3ステップの内容は、あくまで概要となり、詳細な手続きが必要となります。また登記終了後も法人口座の開設や各役所への書類提出など、数多くの必要事項がありますので、漏れのないようにチェックしましょう。

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べンチャー設立時に注意すべき点

会社を設立する際、基本的なルール以外にも知らなかったでは済まされない注意すべき点がいくつかあります。

第一に資本金の額です。資本金とは、会社設立時の元手といえます。
有限会社は最低300万円、株式会社は最低1,000万円必要と定められていた資本金が、2006年の会社法改正により1円からでも可能になりました。故に、資本力がまだ小さいベンチャー起業にとっては、大きなプラスであるといえるでしょう。資本金は自由に額が決められますが、1,000万円未満にしておくことがポイントです。なぜなら会社設立から2年間は消費税が免除されるからです。
仮に資本金を1,000万円以上に設定していた場合、1期目の決算が赤字の場合でも消費税を納めなくてはいけません。これは起業したてのベンチャー企業にとっては大きな痛手ですので、資本金額の設定は十分注意しましょう。資本金をかなり小さく設定した場合でも、個人(役員)からお金を借りる「役員貸付金」という形がとれます。
また、日本政策金融公庫が、新たに事業を始める人、始めて間もない人を対象におこなっている「新創業融資制度」というものがあります。無担保・無保証人で融資が受けられるのが魅力ですが、創業融資は資本金の2倍の金額までしか借りられません。
資本金の額は会社の信用にも直結し、税率や融資額などに影響することがあるため、無理のない範囲で大きめに設定しておくことがおすすめです。

共同経営の場合、たとえば2人で50%ずつ出資するというケースがありますが、この出資比率にも要注意です。経営がうまくいっているときでも、反対に苦しい状況に陥ったときでも、最終的に決定権を持つのが誰かを明確にしておかねばなりません。株式会社の意思決定は、議決権の過半数が必要ですので、“誰がこの会社のトップなのか”を明らかにし、最低でも51%以上出資をしておく必要があります。
第三者から出資を募る際も同様で、経営者よりも第三者の方が多くの議決権を保有してしまうと、会社を乗っ取られるという事態にも陥りかねません。複数人で出資する際は、議決権にも注意しましょう。

そのほか、事業年度(決算月)の設定や源泉徴収税など、事前にしっかりと調べておくべきことは多々あります。時には専門家の手も借りて、万全な体制を整えておきましょう。

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ベンチャー企業向けの法人形態

ここまで、主に株式会社を例に会社設立の流れや注意点をお伝えしてきましたが、ほかにも法人形態の種類があります。それぞれの特徴をみていきましょう。

1.株式会社

「株式会社」とは、出資者から集めた出資金を元手に、営利を目的に営業される組織形態です。出資者は出資金に応じた株式を持つ株主となり、株主総会で選出した経営者に運営を任せるというスタンスです。
資本金は1円から、上限なくいくらでも可能で、また1人でも設立できますが、株式会社の設立には最低でも20万円の費用がかかり、手続きも複雑なものが多いのが難点です。ただ株式を発行して、投資家から資金調達をしたい場合、上場を目指している場合は、株式会社という形が適しているでしょう。

2.合同会社(LLC)

2006年の会社法改正により、「合同会社 (Limited Liability Company)」という法人形態が誕生しました。主に、個人事業主から法人になる場合、比較的規模の小さい事業を法人化する場合の新たな選択肢として注目されています。
まず注目すべきは、会社設立時の費用が6万円程度と、株式会社に比べてかなり抑えられるという点です。資本金に関しては株式会社同様1円から可能、1人でも設立できます。利益配分に関しては、出資した割合に応じて配分される株式会社とは異なり、出資の割合に関係なく、貢献度などにあわせて自由に配分できます。

設立コスト面や経営の自由度が特徴ですが、一般的な知名度・信用度という点では、株式会社に比べると低いといえます。そのため、商品やサービスの名前が重視される一般の消費者相手(B to C)で取引をする場合は問題ないことが多いですが、対会社(B to B)の取引の場合は、合同会社だと信頼に関して厳しく判断されるケースもあります。

3.有限責任事業組合(LLP)

「有限責任事業組合(Limited Liability Partnership)」とは、2005年の法律で定められた新しい事業形態です。法人格はなく、「組合」という形態であることが特徴です。

特筆すべきは、「有限責任性」です。万が一負債を負った場合、個人事業は無限責任を負い、社長の個人資産も損害賠償の対象となりますが、有限責任事業組合は出資者が出資額の範囲でしか責任を負う必要がないということです。法人ではないが故に法人税が課税されず、出資者の利益に応じて課税される「構成員課税(パススルー課税)」も大きな特徴です。
また、設立のコストが低い合同会社同様に出資の比率に関係なく、自由に利益配分ができる点もメリットのひとつです。

個人事業主が数名での共同事業、株式会社や合同会社内の新規プロジェクト運営、企業間の研究開発におけるジョイント・ベンチャーなどが、この形態の設立例として挙げられます。

4.一般社団法人

「一般社団法人」は、営利を目的としない非営利法人です。非営利とは、株式を保有している株主に利益を分配しないという意味であり、他の会社同様に利益を上げたり、役員や従業員への給与を支払ったりすることに何ら問題はありません。
人が集まることによって法人格が得られるため、設立時には2名以上の社員が必要、資本金は不要です。
利益の配当をしないという点に問題がなければ、法人設立の際の選択肢のひとつに入れてもよいでしょう。

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